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3-1.精神科って楽しいかも [留学]

3-1.精神科って楽しいかも

そのような経緯で精神科の研修を始めた私なのだが、よき指導医や気のいい看護師さん、さらには優秀な同僚たちに恵まれ、毎日が信じられないほど楽しかった。精神科の場合、正直に言えばClear cutに患者さんが良くならないことが多いため、ストレスがないと言えば嘘になる。しかしそれでも自分が医師として成長していることを実感する瞬間があり、単純でわかり易い生きがいを感じることができた。体を使って肉体労働をして、報酬を得ている感覚に近いと思う(私は肉体労働のバイトをずいぶんしてきたので良く分る)。

勉強して、患者さんのお世話をして、たまに(しょっちゅうという説もある)宴会に参加して暴れ、そういった健康的で単純な生活を“猿のように”繰り返した。臨床で超多忙であり、勉強にあてる時間は残念ながらほとんど作れなかったが、体系的に何かを教えてもらえる機会が乏しかったため、何とか無理やりにでも時間を作って本を読んだ。宴会をやめればいい、という至極まっとうな意見は、正直に言って当時は全く耳に入らなかった。我ながら馬鹿な奴だった。

その頃一番苦しんだのは、精神療法(いわゆるカウンセリング)をどうやって勉強したらいいか、ということだった。外来などで涙を流して嘆いている患者さんに、専門家としてどうやって話しかけて何をしてあげればいいのか、学生の頃に身につけた知識と僅か数年の乏しい臨床経験だけでは、目の前で圧倒的な存在感を示す患者さんに対して、自信を持って治療的な面談をすることは事実上不可能で、当時は純情だった私は困りはててしまった。何らかの理論に基づいて一定期間まとまった勉強をし、指導医についてハンズオンのトレーニングを積み重ねることで技量を磨き、自信をつけ、一定の経験が蓄積された頃に初めて治療者として独り立ちする、というプロセスを経るのが一般的な研修方法なのだと思うが、私の場合は様々な理由でスタンダードなトレーニングを受けることが出来るような環境ではなかったため(それでも私には十分で、複数の素晴らしい指導医に育てていただいていた)、事実上、この分野に関しては、準備が不十分なままに患者さんと向き合い、成果を出すことを要求されていたことになる。他の大学や病院でも、同年齢の若い精神科医たちは、おそらく似たような状況におかれていたのだろうと思う。皆どうやって勉強したのだろう。機会があれば聞いてみたいものだ。

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