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ある日の出来事 Aさんの診察 [留学]

ある日の出来事 Aさんの診察

“下血”、ということで、Aさんが私の病院を訪れた。研修の一環で、私のようなロートル医師でもアメリカでは若者たちに交じって決められた研修を最初からやり直す必要があり、その研修過程には内科研修がたっぷりと入れ込んであったため、このような患者さんをお世話する機会を持つことができた。とてもいい経験をした。Aさんは50歳代の初老の男性であり、未婚。将来健康で既往歴無し。身なりはあまりよくなく、長く伸ばした胡麻塩頭はぼさぼさだ。つらそうにお腹を押しながら“やばいのかな?”などとぶつぶつおっしゃっていた。

それで知っている人は知っている、アメリカでは標準装備であるそっけない診察台に座っていただき、型通りの問診や診察をさせていただいた。マニュアル通りになすべきことをなせばいい。結果がNegativeと思われる問診や診察も、手を抜くことなくスクリーニングとしてこなし、見落としを未然に防ぐのがアメリカ式だ。私は研修医の立場なので、上級医がニコニコほほえみながら私の診察を眺めている。診察や診断についての議論はここでは避けたい。

下血、しかも鮮血であるため、直腸の指診をする必要がある。その旨Aさんにお伝えした。悲しそうな顔をした彼は、“そうかい”といってくるりとこちらを向き、身に着けているくたびれたジーンズをするりと下した。

そうすると!!!

彼はジーンズの下に何もつけていないではないか!いきなり人体のうちで極めて個人的かつ大切な部分と対面することになった。驚いた私は腰を抜かしそうになったが、ここはクールな態度を崩すわけにはいかない。患者さんが不安になってしまうからね。こっちの人は裸を気にしない人が多いのは救いだ。

診察が終わり、Aさんにカジュアルな感じでいろいろと尋ねてみると、“この辺の田舎じゃあ、みんな下着なんかはいてないよ”とのことであった。本当なのか?

その後何度か同じような診察をする機会があったが、ジーンズを脱いでいただくときはいつもどきどきしてしまう私なのだった。私の乏しい診療経験では、老若男女を問わず、下着をつけていない患者さんは彼だけであった。

とっても勉強になった。

タグ:臨床 米国 留学
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