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ある日の出来事 米国の鳥との邂逅 [留学]

ある日の出来事 米国の鳥との邂逅



米国の大きな都市は、例えば東京と変わらず繁華で人にあふれているのだが、都市と都市の間には広大な農地、そうでなければ荒れ地が延々と広がっているということを知ったのは現地に行ってからのことだ。手つかずの荒野に七面鳥とか鹿、バイソン?のような大きな動物がほぼ野生のままに現在でも生活していることを知ったときは本当にびっくりした。私の住んだところは中西部の田舎だったので、鹿、リス、アライグマなどには日常的に遭遇していた、というか日常生活の中に存在することが当たり前だった。馬をたくさん買っている人も近くに住んでいたしね。歳から離れた何もない土地をInterstateなどの高速道路で延々と走っていくことがあったのだが、車以外に自分を守ってくれるものはない。クルマは鎧だ、という言い方があるらしいが確かにそのとおりだ。なので結論から書くと、Toyotaを買うのがベストであると私は確信していた。人目を気にして見栄を張る必要は現地では全く必要なかったしね。とにかく信頼性といえばToyotaが世界一だ。少なくとも私は今でもそう信じている。生き残るために、サバイブするためにToyotaを選んだわけだ。旅行中に荒野の真ん中でおかしなアジア人が困っていても、助けてくれたり拾ってくれたりする人はあまりいないのではないか、というのが私の当時の実感であった。田舎町で、スーツを着てネクタイをしめて大きな車を運転していたにもかかわらず、アジア人であるというだけで中指を建てられて命の危険を感じた経験も何度かあるしね。まあ、いまでもヒッチハイクの伝統は残っているようだし、大きなトラックのドライバーは面倒見のいいヒトが多いし、無線でいろいろなところにつながっているので助けてもらえる可能性もあるらしい。しかし、だ。基本的には自分のことには自分で責任を持つという現地の文化なので、信頼性が高いクルマ、私の考えでは日本国内で製造されたToyotaが最も壊れにくいと考え、小さなToyotaを選び、渡米早々に新車で手に入れてそいつをドライブしてどこまでも走っていたわけだ。クルマに関してはいろいろ面白いことがあったのだが、今日は鳥のことについて書いてみようと思う。クルマつながりですが、今回は鳥です“トリ”。

とある日のことなのだが、クルマを道端に止めて車内で調べものをしていると、いきなり窓を思い切り“ガツン”と叩かれた。車内で飛び上がって頭を天井にぶつけそうになったのだが、周りには誰もいない。こういう時はすぐに外に出はいけないと友人たちに教わっている。安全を確認してから外に出ないと、誰かに攻撃される可能性があるからだ。まわりに危なそうな人がいればすぐにでもクルマを走らせて逃げるべきだし、拳銃を構えている人がいたらひき殺しても罪にはならないと教えられたこともあった。こわいこわい。統計学的に銃を持たないほうが殺されにくいという論文を読んで、銃を手にすることはなかったが。この話はまた後日。ともかく私の小さなToyotaの周りには人っ子一人いなかったことを確認した。原因と突き止めるために車外に出てあたりをよく見てみると、丸々と太ったムクドリのような鳥が地面にはいつくばっているではないか。鳥がクルマの窓にぶつかったのか?状況的に考えでそれしか可能性がない。多分そうなのだろう。鳥が車の窓にぶつかるってあり得るのか?少なくとも日本ではそういった珍しい事故を一度たりとも経験したことはない。それで鳥に近づいてそこらに転がっていた棒切れでそっとつついてみようと思ったのだが、物音を聞きつけたのかそのころころと太った鳥は突然起き上がってよろよろと歩き始め、歩いたかと思ったら突然空へと飛んで行ってしまい、すぐに視界から消えてしまった。気絶していたのか?そうなんだろうと思う。クルマのガラスには血のようなものはついていなかったので、大きな音がしたから相当強くぶつかったことは間違いないが、致命傷とはならず、気絶しただけですんで飛び去ることができたのだろう、そこで死んでしまうより、車の持ち主としては良かったのだが。鳥とは思えない鳥との邂逅は、私にとってかなりショッキングなものだった。まあ、笑うしかない滑稽な話だ。印象的だったので10年たったいまでもありありと思い出すことができる。

ここは違う国なんだなあ、としみじみ感じた出来事であった。

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素晴らしい同僚たち 7   Dr.L とH Miyazaki [留学]

素晴らしい同僚たち 7   Dr.L とH Miyazaki



Dr.LがADHDの息子を医局に連れてきたことがある。彼はまだ小さいので、たとえ自宅であっても家族の誰かが一緒にいないと法律違反?なのだそうだ。日本ではかぎっ子という存在がさほど珍しくないが、やはり文化の違いなのだろう。とにかくそういうことになっていたらしい。子守は彼女の夫の役目なのだが、今日は運悪く夫の都合がつかないのだという。実は彼女の夫は定職を持たず、そのころは街中でCoffeeの焙煎をして生活の糧を得ていた、、、のだが、実質的なBread winnerはDr.Lだったのだ。私の周りにはそういったご夫婦がたくさんおられ、珍しくはなかった。甚だしきは、夫がギタリストという人もいたっけ、ああ懐かしいNancy、あなたのことだよ。とにかくレジデントの給料で、夫と子供数人を養って?いるつわもの女性レジデントが何人かいた、という事実。何かの足しになれば、と思って、Dr.Lの夫が働いているお店にいって大量のCoffeeを購入していたのは悪くない思い出だ。

彼女の母はアメリカ原住民(だったと思う)をサポートすることに人生をかけている、人権派?弁護士だと聞いていたが、メキシコ人の男性をパートナーに選んだことと関係があるのかどうか、一家の稼ぎ頭だったとDr.Lは言っていた。つまり彼女の父は定職を持たず、子育てにいそしんでいたということだろう。我々の国では主夫と呼ばれるやつだ。いい悪いは別として、こういうのって遺伝するのかもしれない。愛すべきわが友、Dr.Lは、私には外見的には確かにメキシコの人に見えた。必ずしも痩せてはいないが、小柄であり、髪も瞳も私と同じで珍しく真っ黒なのだ。それでも何かの拍子に顔に斜めに光が当たったりすると印象が変わり、コーカシアンに見えるというユニークなヒトだった。ありがたいことに怪しい東洋の巨人である私は結構親しくしてもらっていたので、今でもたまに彼女のことを思い出す。日本びいきでMazdaの黒いクルマをとても大事に乗っていた。実は思い出ではなく現実の私は最近Mazdaのクルマを手に入れたのだが、どこかで無意識に彼女のことを思い出していたのかもしれない。恐らくお母さんの影響を受けたのだと思うが、彼女はレジデント終了後にForensic psychiatryに進んだと聞いている。なんか弁護士と精神科医のアイノコのような仕事で、説明が難しい、というか私自身よくわかっていないのだが、とりあえず普通のshrinkではない。今頃は幸せにやっているだろうか?彼女なら多分大丈夫、ニコニコ明るい毎日を過ごしているだろう。

失礼ながら名前は忘れてしまったが、とにかくADHDだという彼女の息子さんを一日医局で面倒を見るしかないということになった。彼はレジデント用のPCを一台与えられ、それでゲームをしていたのだが、決して広くはない医局の中で突然椅子から立ち上がって大声で叫んだり、興奮してKeyboardをガンガンたたいたりするので私自身は気が気ではなかったが、同僚たちはみんな育ちがよく優しいので、ニコニコと笑いながらやさしく面倒を見たものだった。私も参加して(させられて)、この悪ガキの面倒を見させられたのだが、その際突然Dr.Lが、“ねえ、Mitakaっていったことある?知ってる?”と言い出した。”Mitaka” ”Mitaka”と彼女はニコニコ繰り返す。ええと、Mitakaって、、、、ああ、そうか、まさかとは思うが三鷹のことかもしれない。それで“それって日本のこと?”と返事をしてみると、“そうそう”とさらにニコニコ。話を聞いてみると、彼女の息子はH Miyazakiの作品の大ファンで、何度か三鷹にあるジブリの美術館に家族全員で行ったことがあるとのこと。Dr.Lによれば、息子さんはジブリの漫画や映画などを与えておきさえすれば、いつまでも飽きずにおとなしく見てくれて手がかからないので、忙しい時などはとても助かるのだという。当時は結構円が高かったので、彼女はずいぶん無理をして日本を訪れたのだと思う、いいお母さんなんだな、あいつは。結局その後ねだられてH Miyazakiの日本語で書かれたOriginalの作品を何冊かプレセントすることになったのだが、家族全員からずいぶん感謝された。息子さんは本場の漫画を楽しんでくれたようだ。

日本のアニメは外国では期待を超える人気があるようで、国境であれ言葉の壁であれ、軽々と越えていくんだなあ。自分は国境を越えて米国で医師として働くためけっこう苦労したのだが、芸術はいいなあ、と、しみじみと思った。

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